大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和58年(行ケ)121号 判決

審決取消事由の存否について判断する。

1 原告は、審決が本願商標と引用商標との外観及び観念の異同についてはなんら判断することなく、称呼の異同についてのみ検討したうえ、両商標を類似するとしたのは、商標類否の判断の方法を誤つている旨主張する。

しかし、商標は商品に付されて自他商品識別の機能を営むものであることにかんがみると、両商標が称呼において類似するならば、たとえ外観及び観念において相違するところがあるとしても、同一又は類似の商品に付されるときは、それらの商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから、結局、両商標は類似するものといわざるをえない。審決が称呼についてのみ検討したうえ、両商標を類似するとしたことに別に違法の点はなく、原告の主張は理由がない。

2 原告は、審決が引用商標から「ゴジイ」の称呼が生ずるとしたのは誤りである旨主張する。

しかし、引用商標が別紙第二のとおり「Gozzy」の欧文字を横書きしてなる構成のものであることは、当事者間に争いがなく、「Gozzy」の欧文字が英語読み風に「ゴジイ」と発音されることは、一般的ということができるから、取引の実際においても引用商標が「ゴジイ」と称呼されることは少くないものというべく、審決が引用商標から「ゴジイ」の称呼が生ずるとしたことに誤りはない。

原告は、引用商標からは「ゴツツイ」の称呼を生ずる旨主張するが、「Gozzy」の欧文字が「ゴツツイ」と発音されるのはローマ字読みの通則に照らしても一般的とはいえず、仮に一部でそのように称呼されることがあるとしても、そのことは引用商標からは「ゴジイ」の称呼が生ずるのが一般的であるとする前記の認定に影響を及ぼすものではない。

また、成立について争いのない甲第一二号証によれば、引用商標の登録出願日と同一の日に、同一出願人から引用商標と指定商品を同じくし、「ゴツツイ」の片仮名文字を横書きした商標が登録出願されていることが認められるが、そのような事実があるからといつて引用商標から「ゴジイ」の称呼が生じないとすることもできない。

原告は、また、英語の発音の例にしたがえば、引用商標からは、「ゴジイ」ではなく、「ゴツジイ」の称呼が生ずる旨主張し、その例として「dizzy」「fuzzy」等の語を挙げているが、これらの語は、いずれも「―zzy」の直前の個所にアクセントがあるとしても、その部分が日本語における促音のようには発音されず、促音のように聞きとられることもないから、原告の主張はその前提において誤つており、理由がない。

しかして、本願商標からは「ゴジ」、引用商標からは「ゴジイ」の称呼が生じ、各称呼は互いに類似し、両商標の指定商品も同一であるから両商標は類似の商標であるとする審決の判断に誤りはなく、審決に違法の点はない。

三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却する。

〔編註その一〕 本件における請求原因は左のとおりである。

一 特許庁における手続の経緯

訴外株式会社伊太利屋は、昭和五一年八月二五日、別紙第一のとおり図案化した「goji」の欧文字を横書きしてなる商標(以下、「本願商標」という。)につき、第一七類「被服(運動用特殊被服を除く。)、布製身回品(他の類に属するものを除く。)、寝具類(寝台を除く。)」を指定商品として商標登録出願をしたところ、昭和五五年二月二六日拒絶査定を受けたので、同年五月二四日これに対する審判を請求し、特許庁昭和五五年審判第九五五九号事件として係属した。原告は、同訴外人より本願商標にかかる商標登録を受ける権利を譲受け、昭和五五年六月一三日、特許庁長官に対し右譲受の届出をするとともに、商標法第一一条第二項の規定により前記商標登録出願を登録第八八〇七九四号商標と連合する商標登録出願に変更したものであるが、昭和五八年三月三〇日「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は同年六月二〇日原告に送達された。

〔編註その二〕本件に関する商標は左のとおりである。

別紙第一

<省略>

別紙第二

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!